第8回


島々日記:1999.3.8

いわぎヒジキがうまいわけ???
 岩城島の特産品の一つ、芽ヒジキは、どうして柔らかくてうまいのか、今回はその秘密を探ってみました。
 島の玄関口に当たる岩城漁港の桟橋を上がった所から、ガンギ(階段)に沿って少しばかり西に向いて行くと漁港の一角、物揚場の背後にまだ舗装されていない空地があります。その端の方に田舎味噌の大豆を炊くときのような大きな釜が4基も並んで白い湯気を立てています。横にはミカンの樹や不用になった柱などの材木が置いてあり、てんせまる(屋号)のオーちゃんとヤーネーが一生懸命で火を炊いているところです。
 早春の海は、まだ冷たい風が吹き抜けているのですが、ここばかりは熱気でムンムンしているようです。夫婦共々、額に汗をにじませて、吹きこぼさないよう真剣です。
 12月の初め頃の大潮でよく潮が引く早朝に、まだ生え始めたばかりの柔らかいヒジキばかりをドッサリと刈り採って粗乾ししておいたものを、こうしてしっかり炊き直しているのです。実は、この炊き方にも秘伝があって、火の勢い加減やら柔らかくするために入れる酢の分量などは極秘だそうです。今日は丁度、息子さんも手伝いに来ており、どうやら後継者として、その秘伝を伝授しているところのようです。
 暫く見ていると、釜の中に何か鮮やかな黄色が見えるので、尋ねてみると、なんとレモンの果実だそうです。これも秘伝の一つなので、あまり教えたくはなかったそうなのですが、「青いレモンの島」のヒジキにこだわって造っているということでした。そう言えば、どこかレモンの甘い香りがするような気がして、、、、。
 2時間くらいかけて炊き揚げると、今度は網ですくい取って干し場へ持っていきます。この間、何回も何回も、ゴミを寄り分けます。そして、気象庁の週間天気予報や長期予報を睨みながら、お天気が続きそうな頃合いを見計らって一気に炊いて干すのです。この風物詩も、気温が上がるのにつれて菜種梅雨やら春雨が多くなるので、今シーズンはこれが最後の釜だということです。
 最近は、この「いわぎヒジキ」を採る人も高齢化などでめっきり減ってしまい、折角の素晴らしい素材も、このままでは埋もれてしまいそうです。水に戻すだけでサラダ感覚で食べられる栄養価満点(豊富な鉄分、繊維質等)のヒジキ、、、、こうして二人で仲良く手間暇かけて、たっぷりの愛情を注いで造っているのです。うまいわけです、ぜひ、お試しを!

写真1:早春の風物詩・港に白い湯気が、、、
写真2:ヒジキに中にレモンがいっぱい
写真3:てんせまるのオーちゃんとヤーネー
写真4:仲良くヒジキを干す二人




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