第4回


島々日記:1998.9.28

(タコの独り言:城ノ鼻)
 「今年の夏は、どがーになっとるんかいのおー……。おんなじ日本じゃのに、東の方は、空の底が抜けたようなザアザア降りで、瀬戸内海はカラカラ天気とはのおー、、、。どうも最近のお天道様は何を考えとんやら、、、、。それにしても、雨が欲しいねやー。雨がないとワシらの食糧となるプランクトンの栄養補給ができんのよー。海水の温度も高過ぎて溶存酸素(BOD)が足らんのよー。このままやったら、また青潮(貧酸素塊)が発生するでー。これから子育ての一番大事な時期じゃのに恐ろしいことじゃのおー。みんなで陸に上がって雨乞いのタコ踊りでもするかいのおー。」

 そんなことを言っとったら、たて続きに台風がやってきて、ええお湿りじゃった。

※海藤花:かいとうげ(タコの卵塊):マダコは1回に10万から15万粒の卵を1週間くらいかけて産卵します。雌タコは産卵後も巣穴に留まって直径2.5ミリの楕円形の卵を縒り合わせた藤の花のように垂れ下がった房(海藤花)に新鮮な海水をかけ続けます。餌も取らずに卵の世話をした雌タコは孵化した後、力尽きて絶命してしまうものもいます。産卵から25〜40日で孵化すると全長3 ほどの体で水中を漂います。

 親の足には1本当り200個もの吸盤がありますが、孵化直後の赤ちゃんダコには、まだ3個の吸盤しかありません。こうして、生まれたたくさんの赤ちゃんダコも魚などに食べられて親にまでなれるのは、ほんのわずかしかいません。これが自然界の厳しい掟なのです。最近は、タコも近代化が進み、空缶や建築ブロックなどを新しい巣穴にしているようです。



島々日記:98.7.14

(タコの独り言:城ノ鼻)
 今年の海は梅雨の雨でたっぷり栄養をもろうて、プランクトンをぎょうさん湧かして、ほんでもって、大好きな甲殻類が、お腹一杯食べれるもんじゃと期待しとったのに、、、さっぱりじゃねゃー。これじゃー、目方が一つも増えんがのおー。ああー、腹が減ったー。なんか食うもん、ないかのおー。(この後、ひとしきり、タコの嘆きが続く、、)

 悪ぃーことに、恐怖の夏休みがそろそろ近づきょーるがのおー。夏休みに入ったら、近所の悪餓鬼どもが、手に手に銛を持って、潜りに来るけんねゃー。下手な奴は問題ないが、カオ爺イやオオガンギのケイジ兄イらが来たら生きた心地がせんぞねやー。ほんとに、いつ捕まるかわからんけんのおー。あの人らやったら、捕まったら、その場で足をブッちぎって吸盤が口の中に吸い付きょっても食べよるでー。ああ、くわばら、くわばら、、、。

 ほんに、夏休みなんぞ、なけりゃーええのにのおー、、、。しーっ、悪餓鬼が聞いたら怒るでー。

「土用ニイナを食うたら背中が割れる」、ほんときゃーのおー?
 土用に食うのは、ウナギばかりじゃあないでー。ほんまに、美味いのんはニイナよのおー。ニイナゆうても、よその者には、わからまあー。ニイナゆうたら、この辺にぎょうさんおる小さな巻き貝のことでの、学名じゃったらニイナのことは「スガイ」、ブンザイは「コシダカ」、タタエニイナは「イシダタミガイ」、ニガニイナは「イボニシ」なんよー。 これをバケツに一杯ぐらい、採ってきて湯掻いて食べたら、もう、最高よおー。とくに、ビールのあてにゃーええけんのおー。マッチ針でクルッと剥いて、尻尾の先まで取れた時の快感はたまらんでー。おもわず、ビール一杯余計に飲んでしまわーのー。

 昔の人も「土用ニイナを食うたら背中が割れる」よっとろーがー。あんまり美味いけん、栄養たっぷりのを食べ過ぎて、背中が割れるほど肥るちゅうことよのおー。でも、ほんとに蝉みたいに背中が割れるん?バカタレ、そがーに食うたら腹の方が先に裂けよーが。じゃが、ありゃー確かに美味じゃのおー。よし、ほんなら、今から城の鼻へでもニイナを採りに行くかーのー。

※写真:これがニイナじゃー


1.ブンザイ  「コシダカ」
大きくて、中身も多く、女性的でソフトな美味さがある。
生息域は、潮干帯の最下部で、転石などの隙間にいる。

2.二ガニイナ   「イボニシ」
殻にはイボ状の突起がたくさんあり、潮干帯の比較的高い位置で岩の割れ目にに生息している。
ほろ苦さを含んだ独特の美味さは、ビールにぴったりで、ニイナの通には垂涎の的となっている。
船底塗料や魚網防汚剤など環境ホルモンの影響で一時絶滅が心配されていたが、少しづつ、回復傾向にある。

3.ニイナ   「スガイ」
サザエを小型にしたような形状で、サザエよりは、こくの深い味わいがある。
潮干帯の中間部から下位で、岩の割れ目や転石の隙間に生息する。
砂に上手に潜って隠れていることもある。

4.タタエニイナ  「イシダタミガイ」
殻全体にメッシュ様の縞が在り、ニイナ類にあっては、比較的高速で移動する。
貪欲な食性のせいか、一番高い位置に生息している為、タタエ=満潮の名前がついたようだ。
採りやすく、数も多い為、軽視されていて、味も一番あっさりしている。

5.ニイナの住む岩礁地帯
ニイナは、このような岩礁地帯の隙間に住んでいて、潮が満ちてくると、岩の表面についた餌などをあさって活発に動き回る。
素潜りで観察していると、負の走光性など、その動きの意外な速さに驚ろかされる。


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