パラグライダー名人  島本 計治さん
 冬は安定した季節風が吹くのでパラグライダーにも絶好の季節です。積善山からのテイクオフは瀬戸内海の多島美を眼下に眺める天女のようなフライトとなります。蜜柑畑の中に降りていくランディング(着陸)では多少テクニックを要しますがトンビの親戚になるのも悪くありません。遥か上空を悠然と舞うトンビたちもきっとあなたを応援してくれることでしょう。

 テイクオフ(離陸)は標高280mの積善山山頂付近から、ランディング(着陸)は標高30mの高度差250m、水平距離にして800m、ブット飛ビだと3分足らずで着いてしまうのですが、トンビのように上昇気流をうまくつかめば1時間を越えるフライトも可能です(地図と写真参照)。これまでのレコードは、滞空時間で約2時間、高度では1,400mとなっておりますが、あなたも是非挑戦してみてください。

 
 なお、島には「宙(おおぞら)散歩の会」というパラグライダーの愛好グループがあり、現在、オジンからギャルまでの幅広い年齢層で20人くらいのメンバーがおります。島でのパラグライダーの楽しみ方情報はパイオニアのこの人(島本計治さん)に聞けば何でも教えてくれます。

名人のお言葉:高く上がれた時は、まるで仙人になったような気持ちです。瀬戸内海に散らばる大小無数の島が手に取るように見下ろせて「世間の憂さ」も一気に晴れてしまいます。たまには、頭の中を「真っ白」にするのもいいもんです。

 問合せ先:岩城村役場産業振興課(島本 0897-75-2500)



レモン博士  脇 義富さん(愛媛県果樹試験場岩城分場長)
 この業界でこの人を知らなんだら「モグリじゃ!」と言われるほど偉〜い雲の上のお人です。日本全国を股にかけて、講演に指導にと飛び回っています。

 島の果樹園には色々な柑橘類が栽培されています。温州蜜柑はたいていお正月までに収穫され1月以降は八朔、ネーブル、安政柑(幼児の頭大の巨大果)などの中晩柑類が収穫期を迎えます。まだまだ市場に出回っていない珍しい柑橘もあり、たくさんの種類を食べ比べて見るのも楽しいものです。また、専門的な興味のある方には愛媛県果樹試験場岩城分場をお勧めします。ここには国内にある代表的な97種類を始め殆どの柑橘が栽培されています。

※八朔:江戸時代に隣の島で生まれた柑橘で独特の風味のあるほろ苦さが中高年だけに根強い人気を持っています。この苦さがわかる人はかなりの渋好みでしょう。「若いモンにはこの良さはわからん!」と一部の年寄りがのたまわっております。艱難辛苦の数々を経て、人生経験を積んだものだけがこの果実の深みがわかると言われておりますが、あなたは果たして「この違いがわかる」でしょうか。

※安政柑:江戸時代・安政年間に瀬戸内海の島で生まれた巨大果の柑橘で酸味の少ない淡黄色の果肉は甘さも強くちょっぴりほろ苦いさっぱり風味がお勧めです。部厚い皮も漬物や砂糖煮にして全てを食べてしまうのが通の技です。とにかく大きいのが全てです。その部厚い皮のお陰で普通に保存しても5月くらいまでは充分おいしく食べられます。

博士のお言葉:岩城は食物(特に魚)がうまいし、遊びは何でもできるし、こんなオモロイところはないでぇ〜!!(注:博士の言う遊びとは、釣り、磯遊び、ダイビング、パラグライダー、スキー等々で、行動力にまかせて何でもやってしまう人なのです) 歳とったらここでノンビリ暮らしてみたいのじゃが、何処かエエ土地なかろーか?



いさり名人  村上 光久さん
 海水の温度が下がってくると潮の流れの速い瀬戸内海でもだんだんと透明度が上がって海の底が良く見えるようになります。大陸からの高気圧が日本全体を覆いどっしりと居座る夜は「ベタ凪ぎ」という鏡のような海面になります。こういう季節は「いさり」のもんです。小型の船にバッテリーか発電機の灯火のもと、長い長い「カナツキ」という矛を持って水深2〜3mの海岸部の魚介類を捕るのです。灯火に付ける傘や「カナツキ」などの道具にそれぞれの熱い思いを込めた創意工夫(秘伝)が隠されているのです。

 放射冷却で体の芯まで冷え込んで指先はかじかみ、船が岩礁にあたって海に落ちることも度々です。それでも大物や意外な獲物に巡り合える可能性が高く、未知との遭遇にロマンを抱く狩人は落水にも懲りず出かけて行くのです。 主な獲物はヒラメ、カレイ、カサゴ、メバル、チヌ、アイナメ、タナゴ、ナマコ、サザエ、サヨリ、タコ、イカ、スズキ、ニベ、アナゴ等々、実に多種多様です。夜行性のもの、藻や岩陰でひっそりと寝ているものなど、その生態も実に様々でとても興味深いものがあります。また、これらの獲物は不思議なことに捕れる場所が殆ど決まっているのです。名人は海面下の小さな石の一つ一つまで熟知しており、どこで何が捕れるかは決して人には教えません。たゆまぬ経験がものをいう世界なのです。もっとも最近では瀬戸内海の海域環境も大きく変わりつつありますが……。

 「いさり」で冷え切った体も、天下一品の美味(恐らくカニの中では世界一美味)・捕れ捕れ「ガゾウ(イシガニ)」の湯がきだちをふーふー言いながら食べていると、すぐに心の中から温まってきます。瀬戸内海の冬の深夜の風物詩で、狩猟民族の本能をダイレクトに刺激し、一度嵌まったら病み付きになる漁ですが、近年は技術的にも精神的にも後継者がいなくなってきました。

名人のお言葉:いつ何処へ行けばどんな魚に会えるかわかるようになるには、何十年もの経験がいる。それに瀬戸内海も年ごとに変わってきているので、自分の体で感じながら経験を積む以外にないと思う。いまでも、船を出す前にはどんな魚に会えるかとドキドキする。(注:まるで恋人にでも会いに行くような感じだそうです)



磯干狩り名人  森本 裕人さん・浜本 等さん
 この二人は、とにかくマメによく動きます。実際に磯干狩りが始まると勝負はほんの1時間足らずですから、藻が生えて滑りやすい岩礁の上をあちらこちらと、こまめに獲物を捜し廻らなくては成果があがりません。そんなところから地元ではこまめな人を称して「イソ(磯)しい人」と呼びます。

 二人の漁場は岩城村はもとより遥か遠くの島(他所の町村)まで及び首尾範囲(?)が広くフットワークも実に軽快です。勿論、情報ネットワークも完璧で今流行りのインターネットをも凌ぐ素速い収集能力を持っています。「どこそこの磯で誰が何時どのくらいのサザエとナマコをどれだけ採ったか」がたちどころにわかるのです。これらの情報と観天望気などの情報とを組み合わせながら緻密な分析にもとづいて明朝の行動計画が即座に決定されるということなのです。

 二人は、これらの漁獲成果を一部の地域住民におおいに還元します。要するにたくさん採った後は「飲めや歌えや」となるのです。このため、二人の周辺グループは自分たちで新たにカラオケハウスまで新築してしまいました。二人とも本職は、お固い地方公務員だということですが、いろんなことをやっているのでどれが本職かわからないという巷の噂です。とにかく、岩城島で、おいしい魚介類を食べたい人は、この二人と仲良くなるのが一番確実な方法だということです。(ちなみに、二人とも美人には滅法弱いということです。)

 初冬から厳寒期にかけて、まだ明けやらぬ早朝に潮が極端に下げる(マイナスの潮と呼んでいる)とき、防寒着に身を包み、丈の長いゴム長を履き、手に手に懐中電灯とバケツを持った輩が集まってきます。「磯干狩り」の始まりです。ゴツゴツとした岩場の窪みや大きな石の下にいるサザエやアワビ、ナマコなどを捕るのです。昔はこの他にも「モガリ」や「アカラメ」といった貝類もいたのですが、……。それでも調子の良いときにはアッという間にバケツ一杯の獲物が捕れます。冷え切った体には獲物の湯がきだちを風風言いながら食べるのが最高です。

 ここ瀬戸内海の干満の差は平均でも3mくらいあり、とくに大潮の時には4m近くにもなります。潮汐の理論は難しくなるので省きますが、月との引力の関係で未明の頃が一番よく下げる潮となるのです。地元でよく言われている潮汐の理論を経験的に表した言葉として「月の出入りは三合満ち」(月の出、月の入りは潮が三合目くらいまで満ちてきていること。潮汐の時間は月の動きから少し遅れながらずれて変化している。)、「一日、十五日の昼だたえ」(旧暦の一日、十五日はお昼頃が丁度満潮になること、たたえ=満潮)、「九日、十日の明け暮れだたえ」(旧暦の九日、十日は明け方と夕方が丁度満潮になること)

 こういう言い伝えをもとに、月の満ち欠けと潮の満ち引きを体で感じ、観天望気と組み合わせながら海を生活の一部として取り入れているのです。だから、島の人たちに取っては旧暦(太陰暦)は大切なバイオリズムの指標となっているのです。あなたも月を観る生活を取戻し、体の中に眠っている狩猟民族の血を呼び起こし見てはいかがですか。きっと、体にいいこと間違いなしですよ。

名人のお言葉(森本のヒロちゃん): 「磯干狩り」は島に生きる人間の醍醐味よー!満ち潮との時間勝負じゃけんトロトロしとるもんは連れて行けん!それでのーてもこの頃は、その者が岩城の磯を荒らしまくりょーるんじゃけんのー!とにかく、とった獲物でみんなとカラオケやるのが一番じゃねー。
名人のお言葉(ヒトくん): サザエは蓋が十円玉より小さいのは採ったらいかんのにのぉー。じゃが今年はマナコが多かったのぉー。おかげで酒がよー飲めたわい。昔はもっといろんなもんがえっとおったんじゃが・・・。

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